私が場面緘黙症を発症してから克服するまでの体験記。誤解が多い症状で苦しむ。

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私は小学生の頃、転校をきっかけに『場面緘黙症』となりそれが1年以上続きました。

あるきっかけでたまたま克服出来たのですが、認知度も低く誤解も多い症状なのでいろいろと苦しい思いをすることも。

今日は私の実体験を交えながら場面緘黙症について綴っていこうと思います。

※あくまで一個人の体験記であり、同じ場面緘黙症に苦しむ人でもその要因や家庭環境、性格などで症状は異なりますのでそこはご理解いただけたら幸いです。

場面緘黙症とは?

言葉を話したり理解する能力は正常で、家ではごく普通におしゃべりすることが出来るのに、学校などの特定の状況では声を出したり話したりすることが出来ない状態が1ヶ月以上続く状態のことをいいます。

症状には個人差があり、学校だと全く話せない子や親しい友人の前だけだと少し話せる子、先生がいると全く話せない子など様々です。

また、発話だけでなく表情や動作がこわばったり思うように動かせない場合も

私の場合はその両方で学校や学校外でもクラスメイトがいる場面では全く声が出ず表情も動きませんでした。

無表情で全く声を発しない転校生はさぞかし不気味だったでしょうね・・・。

家では親から「もういいよ」と言われるほどのおしゃべり。

他の兄弟と一緒になってわあわあぎゃあぎゃあ騒ぐような普通の小学生です。

私は幸運にも2年弱で良くなりましたが、中には10年やそれ以上長期に渡って苦しむ方もいるようです。

ただ大人しいだけじゃないの?人見知りとの違い

「話せないのはただ大人しいだけじゃ?」と思われるかもしれませんが、そうではないんです。

だって私は元々ガキ大将タイプ。女だけど。

声が出ないだけで、ジェスチャーを交えながらクラスメイトとの交流は行っていましたし、からかってくる男子と殴り合いの喧嘩になって先生に叱られることもありました。

ただ声が出ないだけなんですよね。

場面緘黙になる子は大人しい性格の子が多いようですし、人見知りの子だってもちろんいると思います。

単なる人見知りとの1番の違いは特定の場所、状況だけで話せない状況が長期に渡って続く、特に緊張するような場面でなくても話せないことが続くことかと思います。

なぜ発症するのか、原因は?

実は原因や発症メカニズムはまだ研究段階。

ただ、発症するのは元々新しい刺激に大して敏感に反応しやすい子が多いようです。

私も当てはまります。不安になりやすく、今でも新しい環境に慣れるまでとても時間がかかります。

転校で環境がガラリと変わったことをきっかけに、不安が高まり発症したのではないかと思います。

遺伝や親のしつけは関係ない

場面緘黙を「親からの遺伝」「愛情が足りないから」「過保護に育てたから」「家庭環境が悪い」と勘違いする人もいますが、それは誤解です。

それらはほとんど関連性がないことがわかっており、海外ではその啓発が盛んに行われています。

私が学校で話せないのを、父親が母親に「お前のせい」と責め立てていたのはとても心苦しかったです。

同じように勘違いしている人がいたらどうか違うと教えてあげてください。

わざと話さないと誤解されるのが一番辛かった

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当時はインターネットも今ほど普及しておらず、場面緘黙について知っている人はほとんどいませんでした。

学校の先生さえも。(最近では多くの先生に認知されるようになっているようです)

私自身も全く聞いたことがなく、大人になってカウンセリングを受けたときに当時の状況が場面緘黙症だとようやくわかったのです。

そのため、当時は「わざと話さない」「反抗的な態度をとっている」と誤解されることが多かったです。これが一番きつかった。

勉強は出来たから、先生に「わかってるくせに答えない!」「大人をばかにしてる!」と何度も叱られました。

「無表情で子どもらしくない、もっと笑え。」「不愛想」なども言われましたね。

一番覚えているのは教科書を忘れてしまったときのこと。

筆談で「教科書を忘れてしまいました、ごめんなさい」と休み時間に先生に報告しに行ったのですが、「ちゃんと口に出して謝りなさい」と言われて困りました。

やはり筆談で「声が出ません、悪いと思っています。次からは気をつけます、ごめんなさい」と伝えようとしたのですが、書いている途中で「ばかにするな!」とノートと鉛筆を払われてしまいます。

それから「忘れ物をして反省していない罰」として「エレベーター」(こめかみの髪の毛を掴んで上にひっぱり上げる罰。痛い)をされそうになったので暴れて脱走。

その後、親呼び出しをくらい「しつけがなってない」「頑固すぎる」と親ごと叱られました。

母にも申し訳なかったですし、「声さえ出ればなあ・・・」と一番強く思ったときでした。

別のパターンだと授業中クラスが騒がしいときに、「うるさい!みんなみやこさん(私)を見習いなさい!いつも黙々と集中して静かに頑張っているでしょう!」と言われたり。

クラスは変な空気になるし、「黙りたくて黙っているわけじゃないんだけどな~」と思いましたね。

このように、「わざと話さないわけではない」というのがなかなか理解されませんでした。

性格が大人しい子なら「内弁慶なだけ」「人見知り」と片付けられてしまうのでしょうね。

発症すると抜け出すのが難しい

場面緘黙は「話すことが出来ない」のでなく、「自分が話しているのを誰かに見られることが怖い」状態です。

でも話さない状態が続くと、「今自分が声を発するとみんなに注目される」「何て言われるだろう」と周りの反応が気になって余計に怖くなります。

話せない期間が長引けば長引く程、ますますハードルは上がり、話し出すのにかなりの勇気が必要になります。

さらに小学校~中学校ってほとんど同じメンバーが続くので、急にキャラを変えるのは難しいですよね。

また、話さないでいると人との交流が減っていき、より話し出す機会が減っていきます。

このように一度話せなくなると、その状態から抜け出すのがとても難しいのです。

抜け出そうともがいてみても

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私は休み時間、トイレに行くたびに「このドアを抜けたら話せるようになる。大丈夫、絶対に話すんだ」と繰り返し自分におまじないをかけていましたが、いざ教室に入ると全然だめでした。

まるで石にされる呪文をかけられたかのように、ノドも表情もこわばるばかり。

あとは楽しくおしゃべりしているクラスメイトを観察しながら「こう言われたらこう返すといい」など自分が話すシミュレーションを何十パターンも作り、イメトレを繰り返したり。

ただ何を試してみても失敗に終わり、「早く元に戻りたい」と願って途方に暮れる毎日。

話すことが出来ない原因がさっぱりわからず、「何でこんな当たり前のことができないの?」「何で自分だけ出来ないの?」「自分は弱いやつなんだ」とただただ苦しかった。

早めの対処が大切!いじめや不登校などの二次問題につながる恐れも

やはり話さないでいると、周りに「何で話さないの?」と聞かれたり「何か言ってみて。あ、って言って」としつこく言われたり。

からかわれることもあって、大人しい子だといじめを受けるリスクが高まります。

何を言われても反論することが出来ないのですから。

場面緘黙は先程述べた私の体験のように、誤解や理不尽な扱いを受けて悲しく辛い思いをすることが多いです。

頑張ってみてもどうにもならない無力感、自分だけが出来ないことに対する自分への怒り、自責の念。

周囲とうまくコミュニケーションがとれず、孤立することもあります。

このため、うつや不安が強くなったり不登校や人間不信など二次的な問題が生じやすいのです。

よく「大人になれば自然に治る」と言われますが、不登校やうつ病にもつながるので早期発見と早めの対応が必要。

症状が長引くとこの時期に大切な人とのコミュニケーションをとる練習の機会が奪われてしまいます。

例え自然に治って発話出来るようになったとしても、大人になってから社会不安障害など別の問題に悩まされることも多く、早い段階での適切な対処が重要です。

克服できたきっかけ

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私が場面緘黙を克服できたのは、ある同級生の女の子のおかげ。

本当にたまたまで、幸運だったと思います。

その子はなぜか私のことを非常に気に入ってくれて、隣のクラスだったにも関わらず毎休み時間に私のところに遊びに来てくれました。

その頃は先生からの理不尽な扱いと何をやっても改善しない状態に自暴自棄な状態。

私が無表情で何の言葉も反応も返さないにも関わらず、それでも彼女はやってきて楽しそうにおしゃべりを続けるのでした。

面倒になって休み時間になるとすぐに私は教室を飛び出し、学校内をうろうろして逃げるようになるのですが、彼女は追いかけてきました。

私たちは休み時間のたびに鬼ごっこ、かくれんぼ状態。

うざいし「いいかげんにして!」と紙に書いて伝えたこともありましたが、彼女は気にせず毎時間やってきました。

ある日いつものように逃げて、休み時間も終わろうとしていたので教室に戻りました。

机に座ろうとした瞬間、潜んでいた彼女に後ろから強烈に脇腹をくすぐられて、私は思わず「きゃはは!」と声を出してしまいました。

ざわつく教室、にやりとする彼女。

「みやこが声を出した!」クラスメイトが駆け寄ってきて「もう1回!」と話しかけてきます。

私の顔はたぶん真っ赤で、火が出そうでした。

先生が来てすぐ授業が始まりました。「みやこが、みやこがしゃべった!」とどこかで聞いたようなセリフで男子が先生に報告した記憶があるのですが、先生は「そうなんだ、よかったね」とあっさり。

その後、普通に授業が進みました。

「あれ、意外と何ともない・・・?」

最初こそ周りはざわつきましたが、しばらくするといつもの日常。

自分が思っているより周りはそんなに気にしていないのかもしれない。

私の中で変化があったように感じました。

それからは彼女とたわむれながら、少しずつ話せるように。表情もやわらかくなってきました。

だんだんと話す範囲を広げていき、転校してから2年弱。やっと普通の状態に戻ることが出来ました。

最後の運動会では選手宣誓も務め、学校全員の前で大声を出すまでに。

選手宣誓のときに彼女をみると相変わらずニヤリとしていましたし、私を気にかけてくれていた図書館の先生は泣いていました。

大人になった現在

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場面緘黙症であったことに加え、家庭環境も複雑で良くなかったので一時期は心療内科にお世話になりましたが、今では良くなっています。

この時も思いましたが、やはり一人で無理しないで専門家に頼ることは大切なことです。

新しい環境に慣れるのが苦手なことや、人付き合いが苦手というのは少し残るものの、ほぼ普通の人と同じようにコミュニケーションをとることが出来ています。

仕事だって接客業に近い、人と関わるお仕事をしています。

当時の自分からは全く考えられません。とても嬉しいことです。

おわりに

場面緘黙で全く話せなくてもいじめられることはなかったし、私は本当に周りに恵まれていたと思います。

私はたまたまラッキーで改善しましたが、同じように追いかけまわされる状況が逆にプレッシャーとなり悪化する人もいるかもしれません。

場面緘黙は専門家の知識、周囲の理解、その子に合ったサポートが必要です。

「もしかして・・・」と思ったなら、すぐに専門の相談機関や学校に相談するのをおすすめします。

未だに場面緘黙症について知らない人も多いので、説明に苦労するかもしれません。

場面緘黙に関する資料を一緒に見せるといいと思います。

サイトを印刷して持って行ったり、リーフレットを持参するのが簡単ですね。

場面緘黙であった当時は自分が何でこんな状態になっているのかがわからず、良くなるのか、ずっとこのままなのかと出口が見えないトンネルの中にいるようで怖かったです。

自分だけがおかしいのではなくてこれが「場面緘黙症」というちゃんと名前がついている症状で、他にも苦しんでいる人がいると知っているだけで確実に楽になっていたと思います。

私の体験を綴ることで「良くなるんだ」「話せるようになるんだ」と今苦しんでいる人の心が、少しでも軽くなるお手伝いが出来ればうれしいです。

そして場面緘黙を知り、理解してくれる人が増えますように。

「こんな人もいるんだ、わざとじゃないんだ」と知っていただけるだけで幸いです。

入門用に。漫画なのでわかりやすいです。

こちらはコミックエッセイになっているので気軽に読めておすすめ。

子ども向け。場面緘黙の子が自分の症状を理解するのに役立つと思います。他の子への理解にも。

マイナス思考癖で困っている方向けの記事も書いています。

次の記事へ>>>マイナス思考を治す!練習してマイナス思考から抜け出した方法。

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6 件のコメント

  1. こんにちわ。
    ああ、そんなことがあったのですね。
    そうして、ご自分の体験を多くの方に語ってくださるのはほんとうにステキなことだと思います。
    どこでどんなことがあるかもしれないし、この記事が同じではなくても似たような悩みをおもちの方の目に触れるといいですね。
    それにしても、その友人。すばらしいです。

  2. 初めて知りました。
    そして、「もしかしたらあの子もそうやったんかな…」って思い出す子が何人かいます。
    先生…。
    分からなかったかもしれませんが、分かろうとしてくれなかったことにモヤモヤしました。
    でも早めに克服できて本当によかったです!!私もみんなが理解できない持病(精神的なもの)があるので、いつか克服したいです!!

  3. >カメキチさん
    こんにちは。
    苦しかった体験も、誰かの役に立つかもしれないと思うといい経験をしたと思いますね。
    カメキチさんもお辛い経験をされたと思いますが、ブログを通してきっとたくさんの方に勇気を与えているのだと思います。私もそうなれたらいいな。
    彼女には今でも本当に感謝しています。私も彼女のように誰かの心の支えになれればとこんな嬉しい連鎖はないですね。

  4. >りえっこさん
    あまり聞かないのに、結構多い症状のような気がします。本人もただ自分が大人しいだけだと思って自分を責めてしまっていることが多いと思いますね。ちゃんと症状名がついてるって気付ければいいのですが・・・。
    学校現場でも周知されていなかったくらいですからね(^^;)今ではちゃんと研修で教えられるようでよかったです。
    クラスメイトより、大人に言われた酷いことの方が多い気がします。反面教師にしたいですねー。
    精神的なものは目に見えない分、あまり理解されないのが辛いですよね。私は苦しい経験も人生の糧になると信じています、お互いうまく付き合っていきましょう(^^)

  5. はじめまして、最近TVで場面緘黙症について放送されているのを観て、あ、これ、昔の自分じゃん、
    同じような人他にもいるんだと知り、ネットで検索して
    ここにたどり着きました。
    私は今40代後半のおっさんですが、
    保育園途中から小4まで、人前で話す事ができませんでした。
    話せなくなったきっかけだけが思い出す事ができないのですが、たぶんイジメられても、恥ずかしがり屋でやめてとも、先生に相談する事もできず、話せなくなったのかなぁと、思います。
    保育園では、折り紙が下手な子の物と変えられてしまい、なんでちゃんと折らないの!って理不尽に先生に怒られた事は今でも覚えています。
    そうして喋らなくなると、本当は喋れるのに、喋るのが恥ずかしくなって、ズルズルと小4まで人前で喋れなくなってしまいました。
    小学校でも、先生に理不尽に怒られたり、イジメも受け、ズル休みも数回ありました。
    小4の時、ちょっとイジメっ子だった子に放課後遊びに付き合わされ、ホントに嫌だったけど、嫌とも言えず遊んでいたある日、喋れよ!喋らなきゃ殺すからな!
    と言われ、殺されたらたまらないと思い、
    しぶしぶ喋りはじめました。
    経緯はよくなかったけれど、喋り出すきっかけを与えてくれた彼には感謝しています。
    はじめましてで、この様な長文コメントしてしまい、
    すみませんでした。
    生まれて初めての告白文になりました。

  6. >ゆうさん
    検索からありがとうございます!「仰天ニュース」で放送されたそうですね、教えてもらいました。場面緘黙について全国放送で取り上げられるなんて嬉しい限りです。
    保育園から小4・・・かなり長い間苦しまれたんですね。折り紙の件、辛い!私も似たようなことありました(^^;)話せないとわかってるから悪いことなすりつけられそうになったりしましたね~。子どもの世界も結構大変です。
    そしてやっぱり先生には怒られますよね(苦笑)現代は教育現場でも広く知られているようですが。そのような子がクラスにいたとして場面緘黙だとわかる先生がどれくらいいるのか・・・。難しいですよね。これからもっとこの症状について認知が広まればいいと思います。
    私もそうでしたが、何が原因で話せなくなっているのかがわからないのが辛かったです。自分だけ何でこんな簡単なことが出来ないのかと。いつか治るもんだとわかっていればもう少し気が楽だったのにな。
    ゆうさんもクラスメイト(?)の子がきっかけで話せるようになったのですね。話せるようになったときのゆうさんの気持ちを想像するとこちらまで嬉しくなります。私もまた話せるようになったときのことを思い出しました(^^)
    長文大歓迎です!しかも「生まれて初めての告白文」!この体験談の記事を書くのは大変だったけど、このようなコメントを頂けて本当に書いてよかったと思いました。ありがとうございます。
    それでは、私こそ長文失礼しました(^^)